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1003_書評4:未来型国家エストニアの挑戦  電子政府がひらく世界(ラウル アリキヴィ,前田 陽二)を読んだ

この本はここ5年くらいで僕が読んだ中でベスト3には入るのではないでしょうか?

今日は世界最高のパンクでロックなスタートアップ国家、エストニアについて詳しく調べたいと思い「未来国家エストニアの挑戦電子政府がひらく世界」を読みました。
著者がエストニア人で早稲田大学への留学経験もあり、エストニアの電子情報機関に勤めていたRaul Allikiviさんと、早稲田大学理工学研究科修了、三菱電機、ECOM、JIPDEC、函館未来大学非常勤講師であり工学博士という前田雄二さんということもあり、実体験に基づかれた非常に説得力がある本だと思いました。

全体として、エストニアという国家のICTへの注力度の高さ、エストニアと比較した日本という国家の持つ電子国家の遅れを述べた本でした。この本を読んでどのページもずっと感動しっぱなしで、今年読んだ本の中で文句なしのNO1なのですが、その中で最も印象に残ったというか自分なりに勝手な妄想の拡大解釈した部分を何箇所かをまとめます。

エストニアに関して

エンジニアにとってのアルカディア(理想郷)だ。

国家単位で世の中の非効率性の排除、スタートアップ企業への手厚いサポート、国家全体の電子化が推進されていてまさに理想郷としか言いようもない。加えて、e-residensyという制度により非居住者であってもエストニアの国家サービスを得ることができるらしいです。

これは将来的に人々は企業に属さないフリーランス化をし、国境を問わないデジタルノマド化する未来を支持し、推進しているという非常に懐の深い取り組みだと思います。

そして、少人数しか住まないことにより急激なベビーブームが起ころうとも絶対に他のインドや中国の様な国家には労働人口では勝ち目がないのを冷静に直視し、仮想現実世界に電子国家を形成し、その電子国家の中に非居住者たちの電子国民としての認可をおろすことによってブルー・オーシャン戦略をとっているなんともスタートアップ志向の強い国家です。

国家単位の政策を全て稟議にかけて、書面を通して、承認、承認、ハンコ、ハンコ、みたいな何の生産性も生み出さないどこかの国と違って、「とりあえず出して、あとはユーザー(国民)の反応を見て速攻で直そうぜ」というPDCAを高速で回そうとするフットワークの軽さも感じさせてくれる。兎にも角にも素晴らしい。僕らが「良い考えがある。起業しよう!」っていうのと同じ様なノリでエストニアの人は「良い考えがある。国の仕組みにしよう!」っていうくらい即断即決即実行するいかにもスタートアップな国家だ。非常にパンクな思想を持ち、21世紀にこんなすごい国があるって知ったら、ジョンライドンもカートコバーンもパンクもグランジもしてなかったかもしれないし、クラッシュもLondon Callingなんてしてなかっただろうし、ボブディランもエレキギターを持たなかったかもしれない。移住しよう。

スカイプの様なユニコーンの本拠地

もともとskypeエストニア発祥の企業でした。ceoの出身は確か他の国だったのですが、開発者の多くはエストニアにいました。そこからebayに買収され、ebayからマイクロソフトへ買収され、今でも開発部隊はエストニアにあります。それだけエストニアが世界的に認められているということです。

当時skypeの開発に携わっていた100名近くの開発陣はほとんどは買収される過程で辞めていきました。ただ、これらはネガティブなことではなくむしろpositiveなことです。skypeが買収されることによりエストニアの様な小国であっても世界でユニコーンになれるのだと意識的な障壁を取り払うことができました。

これはスポーツの世界でいうと、ある種自分たちの中で幻想、障壁として固定観念を持っていたものがある一部の人たちの達成により心理的障壁が囚われ、その障壁を多くの人たちが肥えて行くのと似ていますね。野球に例えると誰も行けるわけないと思っていたMLBに(大体周りがそうであってほしいというからそう考える様になるだけだけど)日本プロ野球界から野茂さんが挑戦し、伊良部選手や松坂選手、新庄選手、イチローさん、松井さん(2人)などが挑戦し、当時であれば(1990年代)であれば生涯野球人生を日本プロ野球界(MPB)で過ごす選択肢しかないと思っていたのを2000年代(イチローさん、松井さん、新庄さん)、2010年代(田中さん、ダルビッシュさん、前健さん)の様に当然の様に一つの選択肢として持てる様になるくらいの大きなインパクトがありました。

加えて、当時skypeにいた開発者たちは買収により大きな資金を得たため、新しい起業家への投資や、スタートアップへの参入などでどんどんエストニアのスタートアップのエコシステムもでて、新たにグローバルスタートアップもでき始めています。それに加えて非英語圏の中では高い英語スキルを有し、小さなマーケットでの市場検証のためには良い場所として位置付けられるエストニアから、シリコンバレー、ロンドンなどグローバル市場に挑戦して行く流れもできつつある様です。開発拠点はエストニアにおいて営業部隊はシリコンバレーに置くという企業も増えているとのことです。すごいすごい。

国家全体としての電子化への本気度がすごい

エストニアでは国全体に向けてのICT推進に大きな力が注がれています。この本の中では、エストニアに関わりのある人のケースを例にエストニアの電子国家としての利便性の高さを伝えていました。

ほとんどの個人情報が一枚の国民カードで補える。

-健康保険証
-カルテや処方箋
-医者の予約
-投票
-交通機関の利用(pasmoとかsuica的な)
-銀行口座情報
-自分の卒業学歴、就業記録、犯罪履歴 など

オンラインで多くの処理ができる。

エストニアでは日本で紙の書類を通したり、わざわざ役所に赴いて行う手続きがほとんどオンラインで完結します。主な例として以下の様なことがあります。

-住民票の取得 -収入の申告 -法人登記 -税金の使途確認 -教育のICT化(シンガポールベンチマーク)   など

情報の透明化により不正が働きづらい

エストニアでは思いつく限りほとんどのものが国民カードに記録されています。それは署名機能や鍵認証、セキュリティサーバーを介したり、基幹システムは特別な対応がなされたりとセキュリティへの対策が強くなされています(金融機関の大部分が電子化されているため)。 そのために、税金がどうやって使われているかという様なことに関して、国民同様に政治家の行動も税金の使途確認のために透明化されているので汚職はされにくい状態にあります。(日本もこうなれば良いのに。)多くの処理やログが国家のメインサーバーに残されているため国民の行動記録や政治家の記録、企業の記録などが残されているため犯罪は起こりにくいと書いてありましたが、これってまさに今注目されているブロックチェーンの技術と同じ様なものであり、スマートコントラクトの様なトランザクションログを残し、改ざんのしにくい仕組みを作ることによって管理コストをへらし、効率化を高めるという動きを2000年代から構想だけでなく実践まで進めているのはすごいことだなと思いました。

日本に関して

課題先進国であるため、ピンチも多いが逆にチャンスでもある。

世界一の高齢化スピードを誇り、財政的な問題も融資、アジア諸国の中で相対的に国際競争力を無くし、事なかれ主義のコスト意識の希薄でエンジニアをものの様に扱う役人やスーツ族の多い日本では課題がたくさんです。ただ、世界で群を抜いて最先端の課題を解決できれば、そのソリューションがグローバルスタンダードとなり、課題解決のモデルケースとして世界から注目されるでしょう。

高齢者比率が高いから電子化が大変なのもわかる。

日本では現在40%近くの高齢者が存在します。高齢者というのはほぼほぼ大多数はデジタルリテラシーがないためエストニアの様に何もかも電子化したら医療や社会保障など一番必要とする高齢者がそれらのメリットを得られないという問題点があるためICT推進をなんでもかんでもするのは難しいなと思いました。そしてこの問題は一時的に解決すれば良いものではなく、日本が世界で珍しくトップを走る高齢化スピードという大きな問題のために電子化すれば、それによってメリットを享受できない人がどんどん増えて行くということです。高齢者の方でも理解できるくらいのUI/UXにすべきかどうかというのは考えていかなくてはいけないことなのですが確かに難しいですよね( ; ; )

そしてこれをなんとかしようと政策を打つ政治家、官僚の方々もほとんど高齢者なので理解が難しいという大きな問題があるのでした。今の日本は銀行システムや既存の大企業のレガシーシステムを見てわかる通り、その場しのぎの応急処置をその都度取っているだけです。

既得権益を獲得して私腹を肥やしている人は自分が生きているうちを楽しめば未来の世代なんぞどうなっても良いと考えているのかわかりませんが、借金をして財政赤字のツケを将来世代に回すという上限のないクレジットカードを切って借金のふみ倒しをしたり、崩れかけた築百年の物件をリフォームによって外観の見た目をよくしてなんとか誤魔化すという様なパッチワークの継ぎ接ぎだらけの仕組みがたくさんあります。

既存の選挙システムも半数近くが高齢者なので、世代単位で考えたら若い人は始まる前からパワーバランスがおかしくなっているのでやる気もなくなりますね。そしてそれを仕切っている政治家も投票している国民もほとんどお年寄りです。誤魔化し続けたものはいずれ崩れるので本来建て替えないといけないのにその場所を譲ろうとはしないので非常にタチが悪いですね。

若い官僚が大量のパワポを社会に発信する様な単発的な動きもありますが、それも一瞬意識が傾くだけで思想だけで根本的な施策や解決には至っていないので、背後にある圧倒的無力感に帰結するわけです( ´∀`)規制を撤廃して、コスト意識を持って、税金を減らして、スタートアップをしよう。

結論

個人の力を高めよう( ͡° ͜ʖ ͡°)