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日々の記録用です。blockchain,bitcoin,ethereumメインです。

1008_書評8:WIRED(ワイアード)VOL.25[雑誌](Condé Nast Japan、WIRED編集部)を読んだ

ブロックチェーンの概要理解とその使用例を再度情報収集したいなと思って久しぶりに読み返しました。blockchain関連の特集は主に10編?

The power of blockchain/credible agreement/blockchain revolution/portrait of a crypto-anarchist/bitcoin vs big brother/the game changers/europe, hacked/days of 2029/blockchain basics/the rise & fall of silkroad
でした。

本書を読んですごくよかったなあと感じたところ

印象に残ったのはspainの暗号通貨ハッカーの話と岩井克人さんのビットコインを「貨幣の本質」から考えた場合必ず滅びると考えていると言う話、そして、エストニアを中心としたEU圏内の歴史的背景とopen governmentの話、kenji saitoさんのブロックチェーンの近未来の話の4編がすごく印象的でした。あとはNTTデータのまとめもすごくよかったです。

本書を読んだことによって、ブロックチェーンの概念、その技術的側面に対する考え方だけではなくて、それを国内だけではなく世界中でのユースケース、業種、そしてどのようなプレイヤーがいるのかや、ビットコインというものが貨幣の概念から考えた場合、長期的に考えて正当性を持つのかなど視野を広く持てるようになったのはよかったと思います。

spainのクリプトアナキストLUIS IVAN CUENDE

彼は取材当時21歳の若さで複数の会社経営を経験しているシリアルアントレプレナー。今は、ビットコインイーサリアム両方のブロックチェーンを採用したブロックチェーン・タイムスタンピング・アーキテクチャー(BTA)を使って、契約書からEメール、リサーチ記録から知的財産まで、あらゆる文書にタイムスタンプを与える原則ゼロコストのオンライン交渉サービス。

-Stampey:全ての書類、メール、データセットを公証する。 https://stampery.com/ -Unpatent:特許権乱用を撲滅するクラウドファンディング https://unpatent.co/
→このサービスとかは技術のオープンソース化を一番に願って、特許で可能性を閉じるんじゃなくて、最高の技術とサービスで優秀なエンジニアを引きつけて世界を取るべきという意志が感じられてとてもアナーキズムを感じられて良い!

3歳からコンピューターに触って、11歳で自分のサイトを作って、12歳でlinuxディストリビューションのAs-turixOSを開発して起業。そこから14歳でシリコンバレーに来て複数社企業。21歳でシリコンバレーに拠点を移すとかいうやり手。すごい。

岩井克人ビットコイン

ここでは、国家の貨幣価値は中央銀行の介入などによって景気変動が保たれている。それに対して、ビットコインの非中央集権の分散処理システムは短期的には良いけど、長期的に見た場合、きちんとした金融政策に詳しい管理者ではなくそのコミュニティの相違に任せるのは本当に正しいのか?ともっともなことを言っていて確かに長期的な視点に立って考えると本当に機能するのかは疑問だなあとも感じた。ただ、新しいものは試してみたいとわからないので、試してみてから考えるのが一番良いような気がするなとも感じた。貨幣を知るための参考図書も挙げられていたのでそれも読んでいきたい。

エストニアン・ブロックチェーン

この特集も面白かった。昔から小国は、ヒトモノカネといった経営資源のうち、移動が容易な人を集めるために魅力あるルールや場所を作ることに注力してきた。ex)カジノ:モナコ、秘密厳守のプライベートバンク:スイスなど。

エストニアにとってITはそれにあたり、GovTechによって民主政治のIT化で世界にその名を知らしめた。

すごく良い表現だなと思ったのは、

今までエストニアが扱ってきたGovTechは、既存の民主的政府の改善が中心の"Government Technology(政府技術)"

一方で、ブロックチェーンが開くGovTechは、自律分散性という特性から、政府のあり方自体を根本的に組み替える"Governance Technology(統治技術)"に転じる可能性をもつ。

この表現を見て、主体手が政府という巨大な管理者から、そのコミュニティ全体の管理に変わっていくんだなと思い、これこそが非中央集権分散システムだなと思いました。

EUは歴史的にEU共同体といったように本来であれば全体統治によってその関係性、政治経済が保たれるはずだったのに、イギリスの脱退や、ブリュッセルストラスブールといったEU期間が集中する年はすでにEU完了の巣窟になっている。

そして、EU統合もなんども試みたがやはり人が関わるところには利害関係もあり、それならばシステムに全部任せた方が良いのではと考えられるところが、エストニアという歴史上ずっとどこかの国の権力かにあり、最近になってやっと独立国家になった国がITによる統治に全てをかけるのもわかる気がした。

人による集権的な仲介組織を廃止、システム全体で広くあまねく信頼を確保するブロックチェーンによって、権力が多層的に工作する、宙ぶらりんの超国家体であるEUを統治する形も見てみたいなと思った。もちろん年寄りが牛耳って既得権益や選挙戦略に力を注いでいる日本でも試してみたい。そう改めて思った特集でした。  

Blockchin Days 2029

この特集はkenji saitoさんによる、ブロックチェーンを用いた未来予想図的特集。婚姻契約、子供の教育、企業のあり方、政治の形、エネルギーの配分。それらを中央管理システム無しで非中央分散型のシステムでのあり方を考えたもの。参考になった。

nttデータのまとめ

p2p/非対称鍵暗号/分散型台帳/ビットコイン/マイナー/半減期/ソフト、ハードフォーク/Proof of work(作業証明)/ビットコインアドレス/Ethereum/IOTA/R2 Corda/Hyper-leger/Sidechain/Colored Coins
など主要キーワードを用いて、暗号通貨、ブロックチェーン周りを簡潔にまとめていて参考になりました。

上記のように、本書は暗号通貨、ブロックチェーンの概念、ユースケース、未来展望を包括的、かつ簡潔に理解する上で非常に良い本だと思いました。